私は20年間の税理士業のなかでとても印象的な会社があります。
とても素晴らしい商品を持っており、業界平均に比べ粗利益率はいいし、経常利益も出ています。
しかし、資金繰りが悪く、ある時期を境に支払いが滞り、
買掛金・未払金等の負債が払えなくなってきました。
試算表の数値から経営を読み解くとすぐにわかります。
設備投資にお金を掛け過ぎているのです。それと人件費率が高すぎます。
粗利益率も前年より落ちています。
毎月、月次決算報告会で会社の現状分析と改善点をお話しするのですが、
この時期ばかりは報告会が殺気立ってましたね。
毎日、毎日、必要なお金がないのです。取引先の支払いも3カ月溜まっています。
会社の存続にかかわることですから、
どうしてこういう状況になったか、聞く方も説明する方も真剣です。
私がいつも見ていく数字はとってもシンプルです。財務分析といっても、
損益分岐点売上高・限界利益率・労働分配率・固定比率・経常利益率、、、
主な指標はこれだけです。あと、前年対比は必要ですね。
これら全ての指標の改善提案を3ヶ月間やりました。
「これを改善したら、資金繰りが楽になるってゆったやんかっ!」とイライラした声で、
怒られたこともありましたが、私は「きっと効果がでるはず」と毎月続けていました。
4ヶ月経った頃でしたか、、、
「ちょっと資金繰り楽になってきたわ。」という声が聞けるようになりました。
その後もずっと、この改善を続け、
1年も経った頃には財務内容のとても素晴らしい会社に変貌です。
財務内容が良いということは、支払いが毎月滞りなく行われ、
借金も順調に返せているということです。
「経営指標の分析と改善実行は正しい。」と確信できた1年半でした。
本気で私の助言を聞いてくれて、実行に移してくれたお客さんには今でも本当に感謝です。
私たちがやっていた財務分析がどんなものか、ここでご説明しましょう。
皆様は『変動損益計算書』といったものをご存知でしょうか?
【変動費】 売上の増減に伴って変動する費用(材料費・仕入高・外注費等)
【固定費】 売上が増減しても変動しない費用(人件費・地代家賃・保険料等)
【限界利益】 売上高から変動費を差し引いた利益
【限界利益率】 限界利益÷売上高
【変動費率】 変動費÷売上高
【損益分岐点売上高】 固定費÷限界利益率
【目標利益達成のための売上高】 (固定費+目標利益)÷限界利益率
図で表すとこうなります。
《変動損益計算書》
売上アップを目指そうと思ったら、
数を沢山売るか、単価を上げるかしかないですね。
様々な経営戦略・戦術を構築する必要が出てきます。
限界利益を増やそうと思ったら、売上単価をあげるか、
仕入単価を落とすか使用量を削減するか、在庫のロスを減らすかですね。
固定費を削減しようと思ったら、人件費の割合を適正比率に抑えるとともに、地代家賃の検討。
また、前年比より上回っている経費を減らせないかどうか検討する余地があります。
業種によって具体的に様々な方法があるでしょうが、
こういったことを毎月コツコツと実践していくしかないのです。
月次決算を確立し、翌月5日までに前月試算表ができあがり、
これらについて検討しながら、次なる対策を立てていくことが、
儲かる黒字体質の会社に変換していく過程であると思います。